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インテリアを美しくする五色のお飾り

私がイギリス・ロンドンで暮らしていた頃、アジアの家具とヨーロッパや北欧の家具が美しく調和する空間にたびたび出会いました。
異なる文化が響き合い、暮らしに輝きを生むインテリアにすっかり魅了されたのです。

その経験から、五色のお人形を制作するときは、現代の暮らしやインテリアに自然に溶け込み、暮らしが楽しくなることを常に意識しています。
伝統の美しさを守りながら、洋室やリビング、北欧スタイルの空間にも自然に馴染む──それが五色のお飾りの特徴です。

リビングや洋室に映える飾り方

サイドボードやチェストの上に、五色のお飾りを置いていただくのはとてもおすすめです。
その際に、季節のお花やグリーンを一緒に飾ることで、お節句ならではの季節感を演出することができます。

花瓶やお花の色・大きさとのバランスも大切なポイントです。
お飾りの高さや色合いに合わせて、柔らかい印象の背の低いお花を少し添えたり、落ち着いた色の花瓶を選んだりすると、インテリア全体がまとまり、空間に一層の華やぎが生まれます。

照明やアートピースとのコーディネート

五色のお飾りは、デザイナーズの間接照明やお気に入りのアートピースと並べることで、インテリア全体を一層華やかに演出することができます。

飾る際には、お飾りと照明やアートとの間隔・位置・大きさのバランスを意識すると、空間全体が調和し、より洗練された雰囲気に仕上がります。

五色のお人形は、格式のある伝統美を受け継ぎながら、現代の暮らしにも自然に調和するお飾りです。
和室に飾れば品格を放ち、洋室やリビングに置けばアートピースのように際立ちます。

お花やグリーン、照明やお気に入りのインテリアと組み合わせることで、空間に一層の輝きを添えることができます。
お節句のためだけでなく、日々の暮らしを豊かに彩る存在として、ぜひ五色のお飾りを楽しんでいただければと思います。

「雛人形は何歳まで飾るの?」お片付けのお話と、そこに込められた想い

「雛人形は何歳まで飾ればいいの?」「片付けが遅れるとお嫁に行けないって本当?」
春になると、こんなお声をよく耳にいたします。

答えはとてもシンプル。
雛人形には「何歳まで」といった決まりはなく、大人になっても、結婚してからも、ずっと飾っていただいて大丈夫です。

何歳まで飾るの?

雛人形は本来「子どもの成長と幸せを祈るお守り」。
だからこそ、年齢の区切りをつける必要はありません。
お嬢さまが成人しても、結婚しても、お雛様はずっと“親の愛を形にした贈り物”として寄り添い続けます。

片付けが遅れるとお嫁に行けない?

「片付けが遅れるとお嫁に行けない」という言い伝えもよく知られていますが、
実は、このお話に相当する根拠は見当たりません。

この言葉には、
お片づけやけじめを大切にする心、
物を大事にする習慣、
季節の行事をきちんと締めくくる姿勢、
そんな日本人の知恵が込められています。

つまり「お嫁に行けない」というよりも、暮らしを丁寧に整えることの大切さを教える言葉と捉えていただくとよいかもしれません。

片付けの目安

では、お片付けはいつがいいのでしょうか。
目安は「桃の節句が終わったら、晴れて湿気の少ない日に」。
雛人形は繊細な工芸品ですから、湿気を避けて丁寧にしまうことで、長く美しい姿を保つことができます。
地域によっては旧暦4月3日まで飾るところもありますので、急がなくても問題ありません。
大切なのは、「いつも見守ってくれてありがとう」と心を込めて片付けることです。

季節を生きる日本人の知恵

日本には二十四節気や七十二候という暦があり、古くから人々は自然の移ろいに寄り添って暮らしてきました。
雛祭りの頃は「桃始笑(ももはじめてさく)」と呼ばれる七十二候。桃の花がほころび、春がやってくる時期です。

雛人形を飾ることは、季節の区切りを祝う文化の一部でもあるのです。

文化的な余白──神話の面影

そしてもうひとつ。
雛人形の男女一対の姿を見ていると、日本の神話に語られる「男女の神々が結ばれ、世界が豊かに繁栄した物語」を思い出す方もいるかもしれません。

神々を讃え、その繁栄にあやかる気持ちが、お雛様を飾る心の奥底に流れている──
そう考えると、お雛様は単なる飾りではなく、いのちのつながりを祝う文化として、今も私たちの暮らしに息づいているのです。

まとめ

雛人形は「何歳まで」と決めるものではなく、親の愛を形にしたお守りです。
お片付けも「お嫁に行けない」ではなく、季節をきちんと区切り、暮らしを丁寧に整える知恵。

お飾りを通して、子どもは自然と親の愛を感じ取り、家族の思い出が積み重なっていきます。
だからこそ雛人形は、いつまでも寄り添い続けて良い存在なのです。

 

 

 

 

 

「子どもが生まれるたびに雛人形や五月人形は必要ですか?」──専門店がお答えします

「子どもが生まれるたびに雛人形や五月人形を買うものなの?」
これは親御さんから本当に多くいただくご質問です。

昔からお人形には“お守り”としての意味があり、子ども一人にひとつ用意するのが理想とされてきました。お人形が災いや不幸を代わりに引き受けてくれると信じられてきたからです。

けれど現代の暮らしでは、三人のお子さまに三組のお雛様や甲冑をそろえるのは、なかなか現実的ではありません。収納場所や費用のことを考えると、迷われるのも当然のことです。

⚪︎ 伝統的な考え方
昔ながらの考え方では、雛人形や五月人形は「身代わり」であり「お守り」でした。
そのため「一人にひとつ」という形が良いとされてきたのです。

けれど時代や暮らし方が変わった今、伝統をそのまま守ることが難しいご家庭も多いはずです。

⚪︎ 現代に合った考え方
私たちは、人数分のセットを必ずそろえる必要はないと考えています。
大切なのは「親の愛情をどう形にして伝えるか」です。

たとえば、こんな方法があります。

最初のお子さまには親王飾りを。

次のお子さまが生まれたときに三人官女を。

さらに次のお子さまには五人囃子やお道具、小物を加える。

こうして少しずつ足していけば、家族の成長とともにお飾りも豊かになり、“親の愛を積み重ねていく物語”になります。

また、お母さまやご祖母さまから受け継いだお人形に、新しい一部を加えて、その子のためのお守りにすることもできます。

⚪︎ 親の愛を伝えるお飾り
雛人形や五月人形は、単なる飾りではなく、親の愛を形にした贈り物です。
お飾りを前にした子どもは、美しさを通じて自然と親の想いを感じ取ります。

だからこそ、人数分をそろえることよりも、家族の暮らしに合った形でお人形を迎えることが大切だと私たちは考えています。

⚪︎ まとめ
「子どもが生まれるたびに雛人形や五月人形は必要?」
その答えは“必ずしも人数分そろえる必要はない。けれど、親の愛をどう形にして伝えるかが大切”です。

私たちは、その愛を形にするお手伝いをしています。

⚪︎ 是非ご相談ください
「うちのお飾りに少し足したいけれど、どこを新調するのがいい?」

「母の雛人形を修理して娘に受け継ぎたい」

「五月人形を現代のインテリアに合うように飾りたい」

そんな時は、どうぞお気軽にご相談ください。
お子さま一人ひとりに合った、世界でひとつの“お守り”のかたちをご提案いたします。

👉 [お問い合わせはこちらへ]

 

 

お片付け

今日は皆さまからのご質問が多いお雛様のお片付けについてご説明申し上げます。
お雛様のお片付けで気を付けて頂きたいことはたった2つだけ!『湿気』と『ほこり』です。

「湿気」はカビの原因となりますし、「ほこり」はそのままにしておくとシミや変色、虫食いの原因となりますので注意が必要です。ですが対策は簡単なのでご安心を。

「湿気」対策はお片付けにカラッと晴れた日を選んで頂き、10月中旬から11月初旬の湿度の低い秋晴れの頃にお人形の入っている箱の蓋を開け、中の空気を入れ替えるだけ。そしてお人形の箱を床ではなく少し高い位置に保管して頂ければ心配ありません。もしお人形がビニールに入っている場合は不織の袋に入れ替えてくださいね。


また「ほこり」対策も簡単です。お人形の配送時に同梱されているお手入れセットの手袋をつけて、同じくお手入れセットの刷毛で衣装のホコリを払うだけ。お顔や髪の毛にホコリがついている時には、カメラのレンズなどに使うゴムやシリコン製の手動のエアダスターで軽くシュッシュっと空気をかけてあげれば大丈夫です。

最後に、お人形は一つ一つ不織の袋に入れてから(ビニールからは出してあげてください)箱の中に収めてあげてください。念のため、お人形用の防虫剤も一つ箱の中に入れてあげればさらに安心です。

是非ご参考になさってください。

端午の節句に甲冑を飾る理由

梅の香りが春の訪れを教えてくれる心地良い日、皆さまどうお過ごしですか?

今日は五月五日の端午の節句に甲冑(鎧と兜)をお飾りする理由についてお話しをさせてください。

江戸時代、徳川家が行った世継ぎである男児の誕生を盛大に祝う行事が庶民にも広まり発展した端午の節句ですが、始まりは古く日本書紀まで遡ります。

香り高く薬効のある菖蒲や蓬で厄を払う風情のある美しい行事と、枕元にお人形を飾り赤ちゃんの厄を移した風習が、後の武家の行事と合わさり今に伝わったと言われています。

そして実は武家の男児らしく勇ましく育つことを願い甲冑が飾られただけではなく、甲冑には武具として身を守る以上の力があると信じられていました。

その一つの例として、皇室では古くから男子が誕生すると、檜の薄板で作られた兜に、出し(だし)と言う美しい造花を挿した『檜兜』(ひのきのかぶと)を 神が宿る依代(よりしろ)として飾るしきたりがあります。依代とは神さまが降りる場所ですから、何とも力強いお守りです。

また室町時代に書かれた『太平記』には不思議な力を宿す鎧の伝説が書かれています。
藤原秀郷(平安時代中期)が大百足を倒す百足退治伝説の中で藤原秀郷は龍王からお礼に飛来矢(ひらいし)という大鎧(格の最も高い正式な鎧)を贈られます。現在も鎧の一部が国の重要文化財として栃木県唐沢山神社に保存されていますが、この鎧は着用しているとどんな矢にも当たらなかったと言われ、寺院に収められてからは『飛来矢大権現』として崇められたそうです。

昔も今も甲冑を単なる武具としてではなく神聖な力を宿し我が子を守る『お守り』として飾ってきた私たち日本人。親の愛がいっぱい詰まった、優しい端午の節句を是非是非多くの方に楽しんで頂きたいなぁ。

Profile

原 裕子

1975年8月28日生まれ。

無形文化財に指定された原米洲を祖父に持ち、母は原孝洲。

女子美術大学卒業後、ロンドンに美術留学。帰国後、孝洲の元で三世人形師として修行開始。

2008年に娘を出産。目標は日本文化の素晴らしさを世界に、そして後世に広く正しく伝えていくこと。