雛人形はどこで差がつく?種類別の相場は?

雛人形は日々の買い物に比べると、決して安価なものではありません。数万円から、中には数十万、数百万円など非常に高額な雛人形も存在します。
雛人形を購入するときに「いったいどのくらいの価格帯を選べばよいのか」気になりますよね。しかも同じ予算なら、より質のいいものを…と誰もが考えるでしょう。雛人形の価格は、いったいどこで差がつくのでしょうか。

雛人形の価格はどこで差がつく?

雛人形の価格は、これといった1点のみで決まるのではなく、たくさんの要素が組み合わさって決まります。お人形の顔や手などの細部、着物の仕立て、お道具まですべてにこだわった高額な雛人形もあれば、お人形の作りや表情にこだわり、お道具をシンプルにして価格を抑えるなど、人形メーカーの工夫もさまざま。
ここでは雛人形のどこで主に価格の差が出るかご紹介しますが、一概に「ここで絶対に差が出る」というものではなく、判断がしにくいものということを念頭に置くといいかもしれません。

雛人形の種類、サイズ、人形の数

雛人形の価格を左右するものとして、雛人形の数や人形飾りそのもののサイズが挙げられます。七段の十五人飾りよりも親王飾りの方が価格は控えめですし、お道具なども限られる「ケース飾り」はさらに価格も抑えられていることが多いものです。
雛人形を選ぶ際に予算を決めるかと思いますが、まずはこの種類、サイズ、人形の数を目安にするのが一番簡単です。

雛人形のお顔と衣装

また、価格の差が出やすい部分としては雛人形の「お顔」と「衣装」があります。
雛人形のお顔をよく見ると、高貴で上品な雰囲気のお人形、優しく微笑まれている親しみやすい表情のものなど、個性豊かに作られていることがわかります。表情による価格の差はさほど大きくはないようですが、表情やお顔を作る際の手間や伝統、職人技の有無によって差がつく、ということは多くあります。例えば墨の濃淡を変えながら何十本もの線を重ね、上瞼から瞳、下瞼へと目を描いていく「笹目」という技法は、一人前になるまでに非常に長い時間を要するといわれています。そうした熟練技によって作り出されたお人形は、じっと眺めると非常に味わい深いお顔で、目に見えて違いがわかる点でもあります。ご予算と相談しながら、ぜひこのお人形を…と思うお顔の雛人形を選ぶことをおすすめします。
人形の衣装による違いは、袖口に注目するとわかることがあります。衣装着人形の場合は、十二単の袖口がきれいに折り重なっているか、着物の裏地が表地と違う布で作られているか、縫い目が悪目立ちしていないかなどに注目してみましょう。木目込人形の場合は、衣装の重なりや造形に合わせて胴体に細かく溝を掘り、上から衣装となる布を木目込んでいきます。そのため、細かい造りになればなるほど複雑な作業となり、壮麗さが増す一方で価格も上がります。
また、着物の素材や仕上がりによっても価格に差が出てきます。龍村織物や誉田屋勘兵衛など高級織物の老舗や名門の生地を使用した気品ある華やかな雛人形は、それだけお値段も上がるものの、見る人の目をいつまでも楽しませてくれます。また、布の上から金箔などを用いて絵柄を描く蒔絵など、よりこだわった技法で仕上げられたお人形もやや高価になるもののその絢爛さから高い人気を誇ります。
化繊で現代風の柄でも、絹の伝統柄でも、最近はお子様のイメージによって選ぶお雛様も多様化してきました。明るい色調でモダンな雰囲気や、格式ある色柄など、自由な発想で選んでみてはいかがでしょうか。

雛人形の屏風やお道具

雛人形にはさまざまなお道具や飾りが付属しています。このお道具などの作りにも価格の違いが表れます。例えばお姫様の金の髪飾り。これはアルミ製であったり、プラスチック製であったりします。プラスチックが金色に塗られたものは、軽く扱いやすい反面、色が落ちたり褪せたりしやすく、安価になります。
さらに婚礼道具の行器、箪笥、重箱なども、本漆塗りに金蒔絵が施されたような本格的なものは高額です。屏風に関しても紙製の簡易なものから漆塗りの高級感あふれるものまで価格はさまざまです。
お道具類も今では単品で買い足すこともできる時代になりましたので、あとからお気に入りを買い足す、または壊れたら買い替えるなど、購入時にはこだわりすぎず、インスピレーションで選んでもよいのではないでしょうか。

雛人形のメーカー、作家、ブランド

雛人形の作り手としての歴史や信頼、造形の細かさや美しさ、お顔立ちや衣装、作風や醸し出す雰囲気は作家によって千差万別。一概に「有名だから」「無名だから」という理由で価格の高低を語ることはできませんが、有名な作家や人気の作家が作ったお人形のお顔には、その品格に見合った衣装や小物が着せられていることが多く、また「この作家の作である」というブランドとしての価値も付加されるので、それに見合うだけの価格がついています。
同じメーカーや作家でも、価格帯を広く設けているところは珍しくありません。高価なものもありつつ、手の届きやすい価格の商品も用意している場合がありますので、お気に入りの作風のメーカー・作家を見つけたらサイトやお店を見て、いくつか商品を調べてみることをおすすめします。

木目込みか衣装着か

雛人形の価格を左右するもので、見た目にわかりやすいものはお人形の種類かもしれません。雛人形は豪華な衣装が特長の「衣装着人形」と、あたたかみのある可愛らしい「木目込み人形」とがあります。
衣装着人形は実際に着物を着せるリアル志向の雛人形、木目込み人形は、木の型に布の端を埋め込み、衣装を着ているように仕立てた雛人形です。こちらはコロッと丸くかわいらしいフォルムで、大きさも比較的小ぶりに作られています。
お顔についても木目込み人形は筆で描かれたものが多く、衣装着人形の方はお人形の顔に目の形を作り、ガラス玉をいれた「入れ目」技法になります。どちらの技法も江戸時代からある伝統的な技法です。
木目込み人形の中では、伝統工芸品に分類されるものとそうでないものによって値段に差が生じる傾向にあります。一般的に衣装着人形よりも木目込み人形の方が、比較的安価な商品から用意がある傾向にあります。

雛人形の相場価格は?

種類別にみる雛人形の相場価格

上で申しあげたとおり、雛人形の相場価格は衣装着人形か木目込み人形かによっても違います。ここでは衣装着人形と木目込み人形のそれぞれの相場価格をご紹介します。

親王飾りの相場価格

【衣装着人形】10万円~20万円前後が一般的な相場になっていますが、中には50万円を超えるような高級な人形もあります。

【木目込み人形】10万円くらいから、高額なものだとやはり50万円を超えるようなものも存在しますが、売れ筋の価格は10万円~20万円前後となります。

三段、五段飾り(五~十人飾り)の相場価格

三段、五段飾りは段数の多さや人形の数によって相場価格は違ってきます。

【衣装着人形】三段飾りの相場はコンパクトなもので10万~20万、通常の三段飾りでは25万円~35万円ほど。五段飾りは20万円~60万円程度。段数や人形が増えるにしたがって金額が上がっていきます。

【木目込み人形】木目込み人形の三段飾りは15万円前後からあります。五段飾りまで段数が増えると、お人形の数が多くてもコンパクトに飾れる木目込み人形が人気のようです。お人形が十五人になると価格相場は約35万円~70万円程度となっています。

十五人飾りの相場価格

雛人形のフルセットとも言うべき十五人飾りは、相場価格も一層高額になります。

【衣装着人形】100万円~500万円を超えるような雛人形もあります。

【木目込み人形】30万円前後~70万円程度。木目込み人形の場合は必ずしも段数が多いのではなく、コンパクトに少なめの段数に十五人が収まっている場合もあります。

三人官女

加わるとグッと華やかになる三人官女、楽しげな五人囃子は後から買い足して雛飾りに加えて楽しむ人もいます。その場合、

【衣装着人形】三人官女は3万円~10万円程度、五人囃子は5万円~15万円程度が多いようです。

【木目込み人形】一方で木目込み人形の三人官女は5万円程度~、五人囃子は10万円程度からとなります。

雛人形を揃えるとき、あとから買い足してもいい?

雛人形には、お殿様とお姫様ふたりの親王飾りから、全員揃った十五人飾りまで人数の幅があり、選ぶ際に予算やスペース、気持ちの面で迷ってしまうことも少なくありません。
そんな方にはぜひ、「雛人形をあとから買い足す」という選択肢を候補に加えていただければと思います。はじめに無理のない範囲の人数の雛人形を購入し、後から三人官女や五人囃子などの他のお人形やお道具を買い足して少しずつ豪華にしていく…というのも、楽しみがあっておすすめです。

また、雛人形は子どもにかかる厄を代わりに背負ってくれる厄除け人形の役割を持っています。ですが姉妹の場合、長女と二女にそれぞれお道具までついたセットを購入すると、場所も大きく取りますし、たくさんの費用がかかってしまうのでどうしたらいいかとお悩みの方も多くいらっしゃいます。
そんな場合は、二女が生まれたタイミングで一対の内裏雛を買い足し、お道具は共有して飾るといったかたちでもよいでしょう。もう少し華やかに飾りたくなったら三人官女や五人囃子を後から買い足していくのもよいですね。また、あとから買い足すメリットとして、脇役のお人形たちを少し小ぶりのものでそろえると、飾るスペースが節約できることがあります。現代は段飾りにこだわることなく、平飾りで自由にお人形を飾ることもありますので、自由な発想で雛人形の飾り方をデザインされてみてはいかがでしょうか