第3章:衣裳 ― 西陣織と裂地が彩る美の世界

第3章:衣裳 ― 西陣織と裂地が彩る美の世界雛人形の衣裳

雛人形の魅力を大きく左右するのが衣裳です。五色では京都・西陣の老舗織元に特別注文した金襴をはじめ、選び抜かれた裂地を使用しています。

  • 西陣織の金襴
    西陣織は千年以上の歴史を持つ伝統織物。金糸や色糸をふんだんに織り込み、光の加減で美しく表情を変えるのが特徴です。五色では人形用に特別に縮尺や文様を工夫した裂地を用い、サイズの小さな木目込み人形でも柄が美しく映えるようにしています。

  • 布地の選定
    絹地や縮緬など、柔らかさと張りを併せ持つ布を選び、衣裳全体が立体的に見えるように工夫されています。柄合わせも重要で、衣裳全体のバランスを計算した配置が施されます。

  • 木目込みとの調和
    筋彫りに沿って裂地を差し込む木目込み技法では、布の伸縮性や厚みが仕上がりに直結します。五色では布の特性を熟知した職人が布目の方向を吟味し、シワなく美しく差し込むことで、衣裳本来の輝きを引き出します。

その結果、雛人形は可憐さと華やかさを併せ持ち、現代の住空間にもしっくりと馴染む存在となります。


五月人形の衣裳

五月人形では、衣裳が勇ましさと存在感を形作る大きな要素となります。五色の武者人形や大将飾りでは、雛人形と同じく西陣織の裂地を用いつつ、力強さを感じさせる布使いがなされています。


  • 勇壮さを表す裂地
    鎧や陣羽織を思わせる金襴裂地や厚手の布が多く用いられ、布の柄や光沢が武者人形の威厳を高めます。雛人形に比べ直線的な柄合わせが多く、全体に張りと強さを感じさせる仕上がりになります。

  • 布と筋彫りの一体感
    厚手の裂地を木目込みで美しく差し込むには高度な技術が必要です。五色の職人は筋彫りの溝幅や角度を調整しながら、一点一点に最適な布使いを行うことで、豪壮さと緻密さを両立させています。

  • 細部までの美しさ
    袖口や裾、背面といった目立ちにくい部分にまで布の流れが計算されており、どの角度から眺めても破綻のない美しさを保っています。

雛人形では「可憐で華やかな美しさ」を、五月人形では「勇ましく力強い存在感」を表現する衣裳。
五色は西陣織を中心とした高級裂地を用い、木目込み技法と調和させることで、小さな人形にも本格的な衣裳の美しさを宿らせています。衣裳は単なる装飾ではなく、人形の性格そのものを表す大切な要素なのです。